インフルエンザが流行っているので

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pakutoma

pakutoma (pakutoma)


「なんや、難しい顔して。そんなにウチを呼んだのが悔しいん?」
ベッドの端に座り込んでニヤニヤと私を見る茜。未だに直視できないその顔を見るのも、ひと月ぶりか。
「そう気にせんといて、ウチだってゆかりが倒れてると寝覚めが悪いんや。まあ、情ってやつ?」
情、か。私みたいなのに突然呼び出されても、嫌な顔一つせず病院に連れて行き、今も看病をしてくれている。
そんな彼女の優しさが好きだったのだと、熱で朦朧とした頭が思い出したくもない記憶を次々と思い出す。

寝込む私の横で顔を覗き込んでいる彼女、琴葉茜は、私と付き合っていた。先月までは。
別れの原因は、向こうの浮気。
元々気が多い方だった彼女は、私と付き合う以前にも数人と恋人未満の関係にあった。
私と付き合ってからもそのうちの二人か三人とは連絡は取っていたようで、私もそれは知っていたのだけど。
少し不満げな気持ちを抱えつつ、それは個人のプライベートだし。と思っていたある日のこと。
その日、私は大学の講義が一コマ休講になったので、連絡なしに彼女の部屋へと早めに向かっていた。
数分後、彼女の住むマンションの前で、オートロックを開けてもらおうとインターホンを押そうとした瞬間、玄関のエレベーターが彼女の階から動くのが見えた。
なぜか嫌な予感がした私は、さっと隠れてしまった。






あきた

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