リゼシャロ

pakutoma
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pakutoma @pakutoma
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なんかさっきの投げた時に同じフォルダにあったので投げておきます.これも旧S3に投稿したやつです

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シャロちゃんは、リゼちゃんと離れてからおかしくなってしまった。

シャロちゃんが、リゼちゃんのことを大好きなのは最初から知っていた。

それがただの憧れではなくて、恋愛感情であることも、知っていた。

大学進学を境にリゼちゃんと離れ離れになると決まってからは、リゼ先輩に会えなくなると寂しがっていたことも、知っていた。

幼馴染なのだから、シャロちゃんのことはいつも見ていたし、知っていた。

けれど、最近はあまりにもおかしい。

朝から晩までリゼちゃんの写真を見ては、リゼ先輩、リゼ先輩と呟く。

リゼちゃんの写真にキスをしたと思ったら、小さく泣き出す。

時々、私の足音をリゼちゃんと間違える。

あれは恋する乙女というよりも、もう病気なんじゃないかしら。

「シャロちゃん、シャロちゃん。ねえ、聞いてる?」

「なあに、千夜……。悪いけど、あんたと喋ってる暇はないの。リゼ先輩と喋ってて忙しいんだから。」

「え、リゼちゃん?」

「ええ、リゼ先輩。写真の中にいるでしょう?」

そんなこともあった。

このまま放っておくわけにはいかないと思う。

大学も休みがちみたいだし、なんとか元気付けてあげないと。

シャロちゃんを支えるために同棲しているのに、こんなことじゃあ、申し訳が立たない。

でも、今はもう私の話を聞いてくれるような状態じゃないのかもしれない。

自分ではどうにも出来ないと思った私は、ココアちゃんに電話で相談した。

「ええっ、大変!どうにかしてあげなきゃ!」

「励まそうにも、私じゃダメみたいで……。ココアちゃん、何か名案があったりしないかしら。」

「う~ん、本当はリゼちゃんと会わせてあげるのが一番なんだけど……。そうだ!」

「ココアちゃん、何か思いついたの?」

「千夜ちゃんがリゼちゃんのふりをしてなぐさめてあげるのはどうかな!」

「うーん、確かに今のシャロちゃんなら勘違いするかもしれないけど……。そんなに上手く行くかしら。」

「とにかくやってみようよ!早速ラビットハウスに残ってるリゼちゃんの予備の制服を送るね!」

「うん、ありがとうココアちゃん。やってみるね。」

半信半疑ではあったけれど、シャロちゃんを元気に出来るなら、なんでもやってあげたい。

数日後、リゼちゃんの制服が届いた。シャロちゃんに見つからないように宅配便を受け取り、部屋で着替えてみる。

「少しきついところもあるけれど、少し調整して合わせれば着れるわね。」

「髪を結んでヘアピンして、リゼちゃんの髪型に……。うん、なんとかごまかせるかしら。」

「似てない気もするけれど、やってみるしかないわ。」

あとは、声。

「シャロちゃん。いいえ、シャロ。私が励ますからな、シャロ。うーん、声はこんな感じかしら。」

そして、翌日。

シャロちゃんは、リビングでリゼちゃんの写真を見てぶつぶつと何かを言っている。目には涙が光っている。また泣いていたのかしら。

私は、リゼちゃんの制服と髪型で、リゼちゃんの声を作って、シャロちゃんに話しかけた。

「シャロ。」

「リゼ、先輩……?」

「ああ。シャロ、久しぶりだな。なかなか会えなくてごめんな。」

「リゼ先輩!」

シャロちゃんは、私に抱きついてきた。

私も、シャロちゃんの華奢な体を抱きしめた。

「リゼ先輩、会いたかったです。とても、とても寂しくて……。」

「シャロ、私も会いたかったぞ。」

強く抱き合うリゼの格好をした私とシャロちゃん。でも、シャロちゃんとリゼちゃんって抱き合うような仲だったかしら……。

「リゼ先輩、リゼ先輩……ちゅっ……。」

「シャロ、ちゅ……、シャロ!?」

シャロちゃんが、私に、キスをした。その瞬間、私の頭は真っ白になった。

どうしてシャロちゃんがリゼちゃんにキスを?なんて考えが一瞬頭に浮かんだけれど、シャロちゃんの唇が私の思考を全て弾けさせてしまった。

「ちゅ……ちゅっ……、リゼ、先輩……。ちゅ、ちゅ……。」

「シャロ…ちゅっ……シャロ、まて、ちゅっ……。」

シャロちゃんのキスは激しさを増していき、私は何も考えられなくなってしまう。

着慣れないラビットハウスの制服の感触が、唇の感触が自分じゃなくてリゼちゃんに向けられたものであるということを、どうしたって思い出させてしまうけど……。

「りぜ、せんぱぁ……ぃ……。すき、すきです……。ちゅっ……れろ、はむっ……。」

「シャロ、ちゅっ……あ、あむ、わたしも、ぁ……、わたしも、すき、だ……ちゅ……。」

シャロちゃんに、好きって、言われてしまった。

でも、それは、私がリゼちゃんだから。

シャロちゃんの唇に溺れながら、幸せの絶頂で、あまりの苦しさに泣きそうになる。

何も考えられないまま、シャロちゃんのキスで唇がとろけ、脳内に閃光が弾ける。

「ちゅっ、れろ、ちゅぅぅ……あむっ、れろろ、はむっ……。」

「んっ……ぁぁ……ちゅっ……あっ……ちゅぅぅ……しゃろ、しゃろ……。」

一方的に責められて足腰の力が抜け、ソファに倒れ込んでしまう。

「りぜ、せんぱい……愛してます、愛してますぅ……んちゅ、ちゅぅ……。」

そして、何も分からなくなった私は、致命的な間違いを犯してしまう。

「ああ……んちゅ……シャロ……ちゃ……ん……。」

すぅっと小さくなるシャロちゃんの瞳孔から、私はその間違いに気づいてしまう。

「ぇ……。千……夜……?」

血の気が引いた。ばれてしまった。リゼちゃんに向けられた愛が、私に向けられた怒りに変わるのを肌で感じてしまう。

「シャロ……ちゃん?あの、ごめ……。」

「千夜ぁぁ!!」

シャロちゃんの爆発した怒りは、すぐに悲しみに変わってしまった。

「リゼ先輩は、リゼ先輩はぁ……千夜ぁ、ばか、千夜のばかぁ……うぇ、うぇぇ……。」

私に覆い被さったまま泣くシャロちゃんに、そっと腕を回した。

振りほどかれなかったのは、嫌われてはいないということなのかしら。分からない。

しばらくして、シャロちゃんが話し始めた。

「ねえ、千夜。」

「なあに、シャロちゃん。」

「千夜、あんた、なんでリゼ先輩の格好なんかしてるのよ。」

「だって、シャロちゃんがリゼちゃんと会えなくて落ち込んでるから、元気付けてあげなきゃって思って。」

「だからってあんた、こんなことする?」

「だって、シャロちゃんのためだもの。」

「もう、これだから千夜は……。」

少し間を置いて、シャロちゃんはつぶやいた。

「本当はね、千夜。私、リゼ先輩じゃなくてあんただって最初から分かってたのよ。」

「え……?」

「当たり前じゃない。だって私、リゼ先輩にあんなこと出来るわけないわ。」

「じゃあ、最初から分かってて、私にキスを……?」

「ごめんね、千夜。リゼ先輩がいなくて、寂しくて。あんたをリゼ先輩の代わりにしていい、愛していいって思ったら、止まれなくなっちゃった。」

「ううん、いいのよ。シャロちゃんが幸せなら、私も幸せだもの。」

それに、例えリゼ先輩の代わりだとしても、私が私のまま愛されていたというだけで、私にはそれで十分だった。

それ以上は求めてはいけない。私はあくまで、幼馴染の恋路を見守る気の利くお友達じゃないと。

「それで、なんだけどね。」

「なあに、シャロちゃん。」

「あんたが良ければ、なんだけど。」

「……?」

「その、千夜に、これからも、こういうことして、良いかな。」

「千夜が、リゼ先輩の服を着て、とかじゃなくて。」

「千夜に甘えたり、その、キス、したり。」

「寂しいときは、しても、いいの、かな?」

心臓が、跳ねた。

シャロちゃんが、私を求めてくれている。リゼ先輩の代わりではなく、私、宇治松千夜を。

「もちろん。シャロちゃんが寂しくなったら、いつでも甘えてくれていいのよ。」

「むしろ寂しくなくたって、いつだって甘えていいわ。」

「千夜、大好き。」

ちゅっ。

それは、シャロちゃんの、私への、ファーストキスだった。