名前のない天藍会

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天子と藍子さんが会うので天藍会です。 kb10uy的には天子は16歳158cmです。

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天子「……ふぅ」 冬も年の瀬近く、夕暮れ時に天子はぼうっと窓の外の空を眺めていた。ここは都内某所の喫茶店だ。
某所。 天子「……はぁ」 天子はまたよれよれとテーブルに突っ伏した。こんなことをかれこれ5回ほど繰り返しているような気がする。多分、今の自分の顔は過去最高に自分らしくない顔な気がする。
本当に、どうしてこんなことになってしまったんだろう…

今朝家を出たのは9時過ぎ。別に衣玖と不仲になるようなことがあったわけではないし、それ以外に何か鬱憤がたまっていたわけでもない。天気が良かったので週末の外出と洒落込んだだけだ。
こう言うといかにも私がひきこもりみたいだが、そうではなくて同居してる衣玖が迂闊に外出するなというのである。アホか。そりゃフリでしょ。その割にはいざ私が「ちょっと出かけてくるわ」と言っても「あら、そうですか。いってらっしゃいませ」としか返してこなかったので、冷やかしたかっただけなんじゃないかとすら思っている。

衣玖(あいつ)がそう言っていた理由はすぐにわかった。自分の服装は明らかにこの地域のそれから浮いている。行き交う人々にまぁ見られること見られること。中には数秒間凝視してきた人もいたし、はてには写真を求められたりもした(私は気前が良いのでもちろん応じてあげたが)。
しかし結局、自分の興味関心の対象は完全にシャバの空気に移ってしまった。それも仕方がない、なにせ何年ぶりかわからない新しい世界が広がっていたのだから。正直なところ、楽しんでいた。とてもとても。ええ。

深刻な問題というものは徐々にその姿を現す。
私は夢中になるあまり、自分のスマホのバッテリー残量が着実に減っていることに全く気づかなかった。それなりに長持ちするようなアレだったので、そもそも無くなる、もしくは無くなりそうという状況について考えたこともなかった。だからだろう、画面に"シャットダウン中"のモーダルが出てきた時、私はその一瞬にして空っぽになってしまったのである。
その後のことはもう、お察しのとおりだ。完全に生気を失った私は程なくして乗っていた電車を降り、駅を出てふらふらと知らない方向へと歩き出した。
それでたどり着いたのがここ、というわけだ。ポケットマネーが割りと多かったのが不幸中の幸いで、虚無になりながらこうして何かが解決するのを待ち続けているのだ。

かれこれもう2時間は経っている。店内にいた人々はすっかり入れ替わり、全体的に空いてきている。いよいよこの店も閉店が近くなってきたのだろう。その時がきたらいよいよおしまいだ。結局連絡はつけられないし、衣玖が迎えに来てくれたりもしていない。けっこう家から離れている場所なので、そもそも衣玖が来れるかどうかも厳しい。空を飛んで帰ろうかとも一瞬思ったが、最近わずかに芽生え始めたこの世界での常識にならうとそんなことは絶対にできない。それならまだウロウロして補導されたほうが身のためである。
そんなことを考えていると、この時間帯にはめずらしく誰かが入ってきた。数多の不安と一抹の望みをかけて"それ"を一瞥するも、やはり衣玖ではない。まぁそうよね、と思い直して、もう少しその姿を観察することにした。数十分前から私は少しでも気を紛らわせようと、こうして店内の人々を人間観察している。それぐらいやることがないので。
天子「……」 少女。身長は自分より少し低いぐらいだろうか。歳はほとんど同じなように思える。その割には印象は比較的大人っぽい。服装とそれに纏わる雰囲気がそう思わせるのだろうか。
???「どうも、お久しぶりです」 順当に(?)少女らしいような、かわいらしい声だ。彼女はここの常連と見えて、オーナーと何か話をしているようだ。 ???「……はい、おかげさまで……え?そうですか?ありがとうございます、えへへ」 さっきから感じているこのデジャヴュの正体がわからない。どう考えてもここで出会った人々は皆全て初対面のはずであり、やはりそのほぼ全ては二度と会うことはないし、会いたくない。しかしこの少女に関してだけは、私はどこか別の機会で知っているような気がしてならないのだ。 ???「ところで、あそこの人は、大丈夫なんですか?……は、はぁ……」 別の機会といったって、以前にこの外の世界に出たことなんてない。何か家で摂取可能な媒体ぐらいしか思いつかない。
同年代の少女、ねぇ… ???「……はい、私でいいなら」 話が終わったようだ。これ以上は私が関わることでもないし、気にはなれど結局雑踏の中の有象無象のようなものではないか。それよりも早く帰る方法を見つけなければ。他人にかまってる場合ではない……

???「あのー……どうかしましたか?」 天子「……ん?」 何かと思えば誰かが話しかけててきた。こんな状態の私にいったい何の用なんだろう。正直ほっといてほしい。 ???「私がここに座ったときから急に泣き出してしまったので、何か悪いことでもしちゃったかなあ、って」 天子「……!?」 言われてハッとした。あわてて自分の袖を見ると、じっとりと濡れている。


恥ずかしすぎる。
私の中の一撚りの理性はついにちぎれてしまった。

天子「ぅう、うぁぁぁぁ……ふええぇ……」 天子「なによぉ……」 天子「どうせ私は……」

…………

???「……もう、落ち着きました?」 天子「うん……」 天子「ごめんなさい……こんな、みっともないところを見せちゃって……」 私は何分ぐらい泣き続けていたのだろうか。少なくともそれぐらいには私の精神は追い詰められていたようだった。今はこうしてこの未知の少女に介抱され、一時の心の安寧を得ている。人肌のなんて愛おしいことだろうか。 天子「あなたは、何なの?」 ???「私ですか?……うーん、そうですね……人を笑顔にできる女の子、ですかね」 天子「……はぁ」 ???「もう他の人もいないみたいだし、言っちゃってもいいかな」
藍子「私、アイドルの高森藍子です」
天子「たかもり……あいこ……?」 藍子「もしかしたら、テレビで見たことがあるかもしれませんよ?」
一瞬で正気に戻った。;;高森藍子。そうだ、この少女はアイドルだった。だから会ったような気がしてならなかったのだ。IPSやTNの向こうの、あるいはちょっとした憧れの存在だったアイドルというものに、こうして直接対面しているというのは、運命の意志を感じずにはいられない。 天子「知ってるわ!『藍子のクソ良い話』いつも観てるもの!」 藍子「本当ですか!?嬉しいです」 藍子がほにゃっと笑顔を浮かべている。それを見るとなんだかこっちまで優しい気持ちになってくる。

藍子さんがなんやかんやで天子を家に連れ込む

二人は幸せなキスをして就寝

オチ: 天子の家の裏が藍子さんの家

まだつづく

ちなみにこのあと天子にあるツテからアイドルとしてのスカウトがかかるのだが、それはまた別の話だ。